『おくりびと』 旅立ちの時、永遠の美をさずける

主役が美容師・理容師の映画10選!
『おくりびと』旅立ちの時に、永遠の美をさずける

旅立ちの時、永遠の美をさずける(ネタバレあり)

こちらは、まったくの素人から1人前の納棺師になる青年の成長物語です。

「美容師・理容師」という職業とは少し違いますが、
「ヘアドレッサー」「メイクアップアーティスト」と「スタイリスト」を兼ねています。

しかもお客様はすでに亡くなり、自分では注文もリクエストも言えない方たちです。
その故人の肌や髪にふれる<人生の最期の美容師・理容師>とよべるでしょう。

物語の舞台は、山形県の酒田市。

冬は雪が多く、川の水は澄み、水田に鳥が舞う、豊かな自然が美しい土地です。

東京でチェロリストとして活動していた小林大悟(本木雅弘)は楽団解散で仕事を失い
故郷の山形へ妻・美香(広末涼子)とともに帰ってきます。
亡き母が遺してくれた古い家が1軒あったので、そこで新生活を始めます。

仕事探しで、旅行代理店と間違えて応募したのがNKエージェントという納棺を行う会社。

「旅のお手伝い」のつもりが、実は「旅立ちのお手伝い」
求人広告のミスで「立ち」の文字が抜けていたんですね…。

最初は仕事が辛くて大変だし、愛する妻に仕事を正直に言えない…。
葬儀の仕事に偏見を持つ地元の旧友からも非難されて迷っていました。
けれども社長(山崎努)とともに仕事をするうちに、遺された家族から感謝されて…。
大悟は、この仕事の意義がわかり、いっそうマジメに取り組むようになります…。

まず主役を演じる本木くんの体当たりの真剣さに心が打たれます。
彼の誠実でストイックでそれでいてユーモアあるキャラクターが
あまりなじみがない職業を、明るく親しみやすくしてくれました。

そしてワキ役のお風呂屋の女将さんの吉行和子さん、
その風呂屋のお客さんの笹野高史さんという
熟年コンビの演技と存在感はさすがです。

しかし、なんといっても、全編を引っ張るのは、社長役の山崎努さん!
その圧倒的にして説得力がある演技がアメリカでも評判になったそうです。

彼こそが、この作品『おくりびと』の精神性を支えており、
世界中の人々が見て感動できる、この映画に永遠の命を与えたと思います。

また久石譲さんの音楽も、素晴らしい彩(いろどり)でした。

久石さんは、アカデミー賞長編アニメ賞受賞の宮崎アニメ『千と千尋…』や、
ベネチアグランプリの北野武作品『HANAーBI』も手がけています。
大きな国際映画賞を受賞する作品で透明感がある美しい音楽はきわだっていますね。

亡き人へのリスペクト(尊敬)は、
その人の人生へのリスペクト、遺された家族や知人へのリスペクトです。

米アカデミー賞(2009年・第81回)の外国語映画賞を受賞。
日本映画としては4回目の同賞の受賞となりました。
最近の2021年には中国で公開されて大ヒットしたそうです。

人を見送る形は、宗教や国、地域によって違い
価値観や死生観もさまざまですから
どれが正しいということはないと思います…。

けれどもこの映画で描かれた
納棺師の亡き人への細やかな心づかい
舞踊か茶道のような様式美の所作は
日本の良さを最大限に生かしていたと思います。


『おくりびと』(日本映画 1940年)
監督:滝田洋二郎
出演:本木雅弘 広末涼子 山崎努 他

この作品のコラムは…
『おくりびと』旅立ちの時、永遠の美をさずける

主役が美容師・理容師の映画10選!
『チャップリンの独裁者』
『東京物語』
『おくりびと』
『髪結いの亭主』
『シャンプー台のむこうに』
『バーバーショップ』
『バーバー』
『マグノリアの花たち』
『ビューティショップ』
『スウィニー・トッド』フリート街の悪魔の理髪師