全人類への名スピーチを語った床屋さん(ネタバレあり)
世界の映画史上で、もっとも有名な床屋さんといえば、この男!
喜劇王チャップリンが演じた、ユダヤ人理容師です。
(彼に個人の名前はなく、クレジットでも 「ユダヤ人の床屋(a Jewish barber)だけです)

この善良で平凡な理容師と、冷酷な独裁者ヒンケルは、顔が似ているという設定で
チャップリンは、ひとり2役で演じます
ヒンケル役の時には、地球儀を風船のようにもてあそび、
独裁者のうつろな狂気をブラックユーモアとしてあらわします。
ヒンケルは、もちろん、ドイツのヒットラーをモデルにしています。

そして床屋役の時には、ハンガリー舞曲の音楽に合わせて、お客さんのヒゲをリズミカルに剃り、
カミソリをふりまわすスリルも混ぜて、笑わせます。

逃げるユダヤ人の理容師と、迫害する独裁者の顔がそっくりという皮肉とサスペンス…。
ヒンケルと間違えられた床屋は、大観衆の前で演説をしなくてはいけなくなり…。
もし、ユダヤ人とバレれば、収容所送りか、その場で銃殺されるかも知れない絶体絶命の危機の中、
彼は勇気をもって語りはじめます。
「申しわけない…(アイム・ソーリー I’m sorry)…」
彼の言葉はとても人間愛にあふれたもので、生活の真の豊かさや幸せをうったえかけます。
この約3分半のスピーチは、ユーチューブでも見ることができます。
下のURLをクリックすると飛べます。日本語字幕もついています。
https://www.youtube.com/watch?v=KORLjq2ebgA

…演説を終えた床屋さんは、離れ離れになっている恋人・ハンナに語りかけます。
「ハンナ、聞こえるかい…?」

この映画が作られたのは、1940年という時期。
(当時の日本では、日独伊三国同盟のため上映禁止でした)
終戦(1945年)後ではなく、まだホロコースト(ユダヤ人への迫害)の
本格的な悪夢は始まったばかりです。
その早い時期にヒットラーの世界征服への野心、恐ろしく残酷で幼稚でうつろ
という本質を見抜き、自分で演じてみせた「予見」に驚きます!
独裁という狂気の中では、誰ひとりとして安全ではありません。
ストーリーの中に、床屋と仲良しになる突撃隊長シュルツがいます。
しかし彼は、独裁者ヒンケルと意見が対立して失脚してしまい
命の危険が出てきます…。
自分に逆らう人はすべて敵とみなすのが独裁者なのです。

いっぽうで、この平凡で善良な床屋さんは、人間の良心の象徴です。
チャップリンが好んで描いた人間愛のかたまりです。
混沌とする全世界に向かって、声の限りに、愛と平和、自由の大切さを叫び、
スピーチを聞いた人々を感動させた床屋さん。
そのスピーチは21世紀の今日でも生きており、人の心を動かします。
『チャップリンの独裁者』(アメリカ映画 1940年)
監督:チャールズ・チャップリン
出演:チャールズ・チャップリン ポーレット・ゴダード ジャック・オーキー他
この作品のコラムは…
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